箱根駅伝の予想と分析~観戦の手引1

2019年 第95回箱根駅伝観戦のポイントその1

箱根駅伝各区間の観戦のポイント -各校の戦略や駆け引きを楽しもう!-

大会の流れを決める1区 21.3㎞

1区結果は、各大学が描いていた作戦の修正を余儀なくされたり、2区以降の選手に心理的な影響を与えます。

順位よりも、先頭や前後とのタイム差、各選手の目標タイムとの誤差などが重要となります。

超エリートがいるとハイペースになり、最初から1本の列になったり、とびだした後に大きな集団ができる展開になります。(2007佐藤悠基、2011大迫傑)近年は、超エリートを配置する大学が増えています。

①1回目の勝負所・・・品川駅~八山橋(上り)、ここで遅れた選手は、殆どがズルズル遅れてしまいます。ブレーキになると、後続への影響が大きく、遅れを取り戻そうとして失敗する悪い連鎖になりがちです(監督の手腕の見せ所です)。

②2回目の勝負所・・・六郷橋、集団の仕掛けは殆どがこの橋の少し手前から始まります。2区の選手が、如何に走り易い位置でつなぐかが重要です。

③八山橋~六郷橋、淡々と進んでいるようですが、揺さぶりや牽制などが絶えず行われています。力のない選手や調整に失敗した選手が、脱落していきます。自分から仕掛けると相手に利用されるので、誰か出てくれないかなあとか、思い切って行ってみようかなど、様々な思いが蠢いています(団子状態では、監督も指示を出せません)。

ごぼう抜きが見られる2区、各大学のエース対決 23.1㎞

平地に強いエースが配置され(最近はエースを他に配置する大学も出てきた)、ごぼう抜きや大きな順位の変動がみられる区間。1区の遅れを取り戻そうとして、オーバーペースになると、悪の連鎖になりがちです。

将来の日本代表になる選手を探したり、伸びしろのない選手を推測するのも面白いでしょう。

繋ぎ、立て直しの3区、景色抜群の区間 21.4km

繋ぎの選手を多くが起用する中で、エース級を投入して立て直しや往路の成績を狙う大学も出てきました。景色が抜群のコースだが、海岸線での強い向かい風への対応がカギとなります。高温、強風がブレーキの要因となります。

コンスタントに自分の力を発揮できる選手が重宝される 20.9㎞

優勝争いやシード権争いの隠れた重要区間。しっかり繋げたチームが好結果を残せるでしょう。

山登りを制した大学が、箱根を征する 20.8㎞

山登りの最重要性は、現在も変わりません。風祭と箱根の天候の激変、低温、高温などの気象条件が、大きなブレーキを産みます。参加23チーム中、昨年も5区を走った選手が15人もいます。山の神が今年も出るのかどうか?

箱根湯本から874mの最高点まで、約15㎞で864mも登らなければなりません。カーブも多く、急坂が続くので、ひたすら下を見つめて一人で黙々と走り続けなければなりません。これを見ていれば、私たちの不断の起伏走も大したことありません。上りの動きやフォームもしっかり観察しましょう(体軸、前傾姿勢、腕ふり、着地脚、蹴り脚など)。

下りのスピードを楽しめる6区 20.8㎞

最初は上りが4㎞、箱根湯本から鈴廣蒲鉾店まで3㎞の平地、その間の約14㎞が急坂です。時差スタートの面白さ。

前の選手が見えると、自分を見失いがちになります。下りは、1km2分30秒台の超スピードラップです。ブレーキがかからない走りは、しっかりした体幹が必須です。遠心力をコントロールしなければならないコーナリングが、とても難しく大変です。当日道路の凍結や積雪があると、転倒が心配です(記録も落ちます)。ゴールした選手たちの膝はボロボロで、上手く回復させないと、選手生命にも影響が出ます。

シード権が気になってくる7区 21.3㎞

寒い小田原市街を出ると、見通しもよくなる海岸線に出ます。監督たちも、優勝やシード権の行方が気になる頃で、ゴールまでの作戦の練り直しをしながら車に乗っていることでしょう。中間点前からの細かなアップダウンへの対応がカギとなります(前が見えたり見えなくなったり)。繰り上げスタートも、そろそろ気になってきます。

優勝、シード権を意識してくる8区 21.4㎞

箱根、富士山を背中に、追い風(の時が多い)に乗って前半無理をすると、中盤からのだらだら坂、遊行坂で痛い目に遭うことになります。残り僅かで、優勝、シード権が脅かされることになります。

襷が重くなってくる9区 23.1㎞

最初の3㎞権田坂の下りの走り方に注目。10位以降の大学は、無理を承知で前を追うでしょう。10以内の大学は、失敗を避けるためにどんな入りをしているか?など。先行きを予測しながら観戦しましょう。汗を含んだ襷が急に重くなるのもこの区間です。アンカーの選手の力を考慮しながら、優勝、シード権のために、どのように繋ごうとしているかが面白いです。シード権が望みのなくなった大学は、母校の襷を繋ぐことに必死になります。最終区とともに、表情や走りから選手の心理を読んでみましょう。車の上からの監督の指示も見られると面白いですね。

シード権をめぐる10区の攻防の面白さ 23.0㎞

最終区に入ると、各チームがシード権を獲得できるかどうかが大凡わかります。安全圏にある大学の監督は、無事にゴールすることをひたすら願います。

①1㎞の入りを無理させない:予定より5秒ほど落とさせます。

②品川駅手前の八山橋の上りを余裕を持った状態で無事を願います。

③大手町のゴールまでそのままゴールすることを祈っています。

シード権争いの大学・・・コースに配置した部員と連絡を取りながら、シード権獲得に必要なタイム差を絶えず計算しながら、選手に指示を与えています。繰り上げスタートがあったチームの、タイム計算(専任がいるはず)は大変です。

①ペースの指示 ②八山橋までの走らせ方 ③八山橋からの勝負のかけ方などを推測して観戦しよう。

選手・・・情報を把握して走っている選手が、どう対応できているかが面白いです。特に、併走、前後20~30秒差までの選手たちのやり取りや表情・動きに注視してみましょう。

※ 選手たちは監督のロボットではありません。目標通りことが進むないのが当たり前。箱根にかけた情熱や人生を20㎞に懸けた選手(監督、付き添い、同僚の裏方)たちの走りを観戦しましょう(日テレのシナリオにのらずに)。

【執筆者】

岡田(松永)一彦 1970年卒 千葉県出身

箱根駅伝は43、44、46回大会は1区、45回大会は7区に出場。

1968年の日本インカレ3000m障害で2位。

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